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【No.51 2022年3月】 「日本アイアイ・ファンド(NAF)2021年度の活動報告」
日本アイアイ・ファンド代表 マナサムディ山地の植林 (2021年3月10日、ブルノーさんドローン撮影。植林成果です。雨季のサッチャナヤシがきれい!) コロナに明け、オミクロンに暮れた2021年が過ぎましたが、2002年2月になっても東京では一日二万人という感染者に湧いています。しかし、七十代半ばの老人どもはすでに政府のコロナ無策には飽き飽きしており、効き目の分からない副作用ばかりのワクチンなどそっぽを向いています。自前で生きるしかないと。 アイアイ・ファンドの本来の活動は一部を除き休止状態ですが、山口県宇部市の植物園、動物園との協力やマダガスカル以来の関係企業との協力、若干のテレビ出演などもあり、またマダガスカル現地での植林活動や苗畑の回復のための送金など、活動はつづいてきました。2021年の干ばつはマダガスカル南部での飢饉状態について国際的な報道がされていますが、首都でも水不足が起こり、苗が全滅という非常事態もありました。しかし、これもなんとか乗り切って、次の植林と調査を準備しています。またアイアイにつけられた首輪をはずすことも忘れていません。 年表的に 1月5日、「戦後学生運動の総括を始めた。」これ、まだ続いています。 1月10日、「全日空機内誌『翼の王国』の最後の原稿『西表島のカンムリワシ』を送った。」機内誌の連載は2007年4月から「水族館」「動物園」「天然記念物」とシリーズで阿部カメラマンと島のコンビは14年間続いた。機内誌自体がなくなるとは! 1月13日、マダガスカルへ植林関係費用などの送金。 1月14日、宇部市より電話。「バオバブが中心の展示」と。大車輪で資料編集が始まる。 1月22日、被子植物の起原年代と起原地をマダガスカル・大インド連合大陸とする仮説に基づく宇部市マダガスカル植物展の基本構想できる。 1月27日、マダガスカル植物標本整理。濱口さんの収集分多数(特筆すべき功績!)。 1月30日、宇部市マダガスカル植物展示用の文書と写真を一冊のパンフにまとめた(114頁)。マダガスカルの植物をこれほど調べることになるとは思わなかった。 アンジアマンギラーナとアンタナナリヴ大学にある華麗な花の木:マメ科ジャケツイバラ亜科バウヒニア(ハカマカズラ)属ソシンカ(蘇芯花)Bauhinia monandra、別名ナポレオン・プルーム(ナポレオンの飾り羽)。五弁の花弁が特徴。 2月4日、アイアイ・ファンド報告書発送。142部。 2月10日、宇部市へ展示内容データ送付。マダガスカル映像から写真を切りとると、ペリエバオバブのクリーム色の花弁は風に翻っていた。単行本一冊はできるという量の仕事だった(できてしまえば、ひとつの部屋を展示物で埋めるだけのことでしょうが・・・ねえ)。 2月20日、マダガスカル映像をデジタル化。1巻45分の45巻分。 アイアイの出産関係のデータとりまとめ。 2月21日、アイアイ・ファンド年次報告会(ズームによるウェブ会議19名参加)。 2月26日、ブルノーさんから報告第一弾。報告第二弾ではドローンでの撮影。 3月27日、宇部市でのマダガスカル植物展会場でのズーム会議。下関の皆さんも参加。5月末までマダガスカル植物展開催。 3月15日、赤松さんが島代表の悪文を訂正して緑化協会に出した申請書が受付けられた。 3月18日、「第三回JTS学術賞に選定された」と佐々木伸雄先生(元東大教授、マダガスカルに連れて行ったリリの主治医)から連絡。 JTSとはジャパン・トレジャー・サミット(日本語ではどう訳すんだろう?)、公益社団法人(代表理事:28代東大総長の小宮山現三菱総研理事長)である。 その活動の中にJTS山本邦山賞・学術賞の選定がある。この賞への推薦は、JTSが定める「独創人」による。「独創人」は学術芸術分野のわが国の第一人者で、そのリストの中では、佐々木先生と長谷川眞理子綜合研究大学院大学学長の二人しか知りあいはいない。 5月17日、『メ・ソワサント・ウィット』(1968年)当時東大理学部学生だった人から52年ぶりの連絡があった。「東京に出てきたら会いましょう」と。 5月25日、NHKBSの製作会社から安田講堂関係で出演依頼。「家族にも出てほしい」という。即座に断る。 5月31日、NHKブックスから『魚食の人類史』第三刷との連絡。 6月27日、朝のテニスで右眼出血。「寝ようとするとほとんど見えなくなった右眼が恐ろしい。若干の恐慌に陥って、寝るに寝られない。よほど近くに手を持ってくると、そのぼんやりした輪郭が分かる程度で、視界が霞んでしまっている。これが怖い。」 6月28日、眼科に行くも、眼底が見えないほどで、右眼の視力なし。このあと、7月9日、K南病院で榊原医師(彦島中学校、下関西高の同級生)の診察を受け、治療費も彼が払って晩飯までおごってくれた。持つべきものは友である。この日の診察はありがたく「この診察までなんとか生き抜こうと思った。彼はそういう時の天の助けだった。」 それでも「7月14日と7月20日には、命がけのテニスから生きて帰れるかという日々が続く(この日、気温34℃!)。」この眼底出血の件は、9月9日の都立病院での眼科専門家の診察ののち、9月13日にT大学病院での手術中止を申し入れて終わった。 結局、四人の眼科医に見てもらい、ひとりの脳神経外科医と相談して、手術中止を決めた。まだ見える、というのが自分なりの手術中止を決定した理由で、壊れかかったコンピューター同様、使えるまで使って、それから考えようと。 7月1日、緑化協会より2021年度補助決定通知。 7月7日、JTS学術賞の授与式。昨年度授賞式ができなかったので、山本邦山賞の第四回と第五回の受賞者、学術賞の第二回と第三回の受賞者が並ぶことになった。 学術賞の選考委員会は野村四郎(能楽師、東京藝術大学名誉教授)委員長など。 第四回山本邦山賞受賞者は隅研吾氏(建築家:写真上段中央)、第五回受賞者は太鼓奏者の林英哲氏(上段左)だった。第二回学術賞受賞者の菊池康紀東大未来ビジョン研究センター准教授(上段右)。私と第三回学術賞を同時受賞したのは、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構JAXAの山川宏理事長(下段左)だった。 自分の名前を呼ばれて小宮山元総長(下段中央)の前に立った時に、人生初とも言えるほどの緊張感があったのは、あたりに居並ぶ都会人のきら星たちの数に、生涯の山野放浪者が圧倒されたためだった。なさけない。 受賞式の二分間スピーチ。以下。 「私は生涯職につかず、というか、職にありつけず、野外でニホンザルやアイアイを追いかけて、とうとう一生を過ごすことになりました。サイエンス・ライターとしては人類学関係の本を何冊か書いてきましたが、優秀な編集者たちのおかげで、いくつかの新しい展開を経験できました。 マダガスカルでのNGO活動も二十年間つづき、孫世代が大学生となって現地に向かうようになり、一万三千ヘクタールあまりの保護区周辺には三十ヘクタールあまりの植林地ができました。 さて、これからは、サイエンス・ライターを脱皮し、奇想天外・前代未聞の破天荒な冒険小説を書き、そのかたわら、若者たちをマダガスカルの現地で鍛えようと考えております。ちょうどその転換点の今年、ジャパン・トレジャー・サミット学術賞を頂きました。その幸運に、飛び立つような思いでおります。ほんとうにありがとうございました。」 孫に当日の写真を送る。その返事「ええええ すごっ!すんごいメンツの中にいる」ちょっとはジジを尊敬したか? 7月22日、映像用コンピューターを起動すると壊れている。とうとう寿命である(2012年購入)。7月27日、「ダチョウについて調べる。あれは恐竜である。なぜ、恐竜は二足で立ちあがったのか?」 8月18日、中央公論新社より『安田講堂』第四刷決定とのこと(合計部数が二万をこえた)。10月11日、『安田講堂』四刷を受け取った。帯がいい。前回なかった帯の上の青の横線が道浦母都子の珠玉の短歌を引き立てている。 8月24日、アイアイ・ファンド期待の新人、東京工業大学一年生愛実さんにアイアイなど原猿類の論文データ(304論文)を送る。こちらが蓄積したものが役立つといいなあ。 9月24日、木々の姿を収集中。「改めて、マダガスカルでの経験の大きさ、深さを実感している。よほどの幸運だったのだ、と痛感。マダガスカルという現場を持っていると、世界観が変わる。」 9月27日、米倉さんと横浜根岸森林公園に行く。 かつて横浜競馬場があった広い公園で、丘の上に米軍基地がある。その広い芝生の隅にヤマザクラとエノキ(写真左)が根をからみあわせて、いっしょに立っていた。こればかりは他に類例のないみごとな木立だった。落葉樹はこれほど密に共生できる。 この木立の背景透明化をやっていて、突然悟る。木はその地上の姿だけを取りだしても無意味である。その地上と同じほど地下に根が広がっている姿を想像することができなくてはならない、と。 9月30日、宇部市ときわ動物園のビデオ講演用資料編集。「この三十八年間(え!というような時間だ)にいろいろな人の写真を入手しているので、その蓄積がすごい」 10月13日、宇部市ときわ動物園のズーム取材。マダガスカルについての全般的な質問から保護の実際まで、30分のビデオ番組にして動物園で利用するという企画に協力。 10月22日午後7時30分から、再放送10月23日午後5時15分から『チコちゃんに叱られる』NHK地上波綜合チャンネルでの放映。「親指が太いのなぜ?」この当然の疑問に対して、その理由を私の『親指はなぜ太いのか』(中公新書)に求めているのが、NHKにしては斬新である、いや感心である。 この番組を監修していて、ふと自分のテニスラケットの持ち方の弱点に気づく。ラケットが手の中で滑るのは、しっかり握りしめていないせいだった。テニスを始めて25年たって気がついたのは、ラケットをボールに当てる瞬間には親指で薬指側をしっかり握りしめなくてはならない、という馬鹿みたいなことだった。親指の太さの重要性に気がついた本人が、自分の生活ではラケットひとつ握れていなかったというお粗末! 10月23日土曜日午後6時半からズーム会議。参加者、小林、渡部多摩動物園長、山吉、原田、誉田親子(東武動物園の世界ワオキツネザル祭りに出た帰り)、古庄、山ア夫妻、米倉、太郎良、岩野北九州市到津の森公園園長、得丸、中野、庄司、阿部(敬称略)。 マダガスカルの忘れ難い食べ物の話になって、小林さんはゼブーのステーキ、岩野は大エビ、山吉さんは果物でとくにマンゴー、阿部さんもマンゴー、庄司さんはマンゴーとジャックフルーツ、原田さんはルマンザブのご飯かけだそうだ。私はご飯。 10月26日、マダガスカルのララさんより今年度の日本日本アイアイ・ファンド送金分の清算書が送られてきた。給与、調査費、コロナなどの薬代、苗購入代、事務所維持費など。 11月3日 テニス仲間のYさんから「ヒトの足の親指はなぜ大きいのか」との質問を受け、ビゴットの手足の図をほぼ全部スキャンして保存し、霊長類の中でのヒトの足の親指を位置づけ、ダチョウと恐竜との比較、テニスでの足指の位置などまとめ、11月8日に回答書を作って渡した。 11月18日 株式会社『メディア・マジック』より会社設立25周年用のプレートに入れるレムールたちの絵について監修依頼。 「メディア・マジック」社プレートの下絵 12月5日 実に10日間かけて全世界のチョウの写真つき分類整理を終えた。17500種の混沌である。これに比べると、120種のマダガスカルのサルの種数など問題にもならない。その大混沌を体験した。「プテロンワールド」なるチョウ分類の元ネタのウェッブ頁をつきとめて、さらに電子顕微鏡写真の世界に入った。それは驚いたことに夜間中学のサイトで、体系的にしかも無料で公開していた(資料請求受付ます)。 12月9日 パラオ関係者と阿部さんとパラオグループ旅行の打ち合わせ。パラオでは鳥を中心にした動物観察会を計画中。阿部さんとは天然記念物を自前で完成しようと。 12月12日 清水さん宅での二年ぶりの忘年会。 12月15日 コロナ流行以来閉鎖されていた東大構内が通れるようになった。 12月17日 マダガスカルへの送金。翌18日、金を受け取ったとの報告。苗畑への水やりについては、車を使って水を運搬しろと連絡。 12月21日 メディア・マジックから絵皿の最終チェック依頼。12月30日には「25周年用挨拶文を」と。大晦日、玄関先に実生から育てて真っ赤な実をつけたマンリョウを置き、富津の藤江さんからの胡蝶蘭とシクラメンを並べ、木更津の森田さんからの立派な自作門松を飾って(お二人ともかつて房総半島高宕山の天然記念物保護事業を教育委員会で担当された方々)、「そうだ」と挨拶文を思い出した。 「マダガスカルにはすでに絶滅した大型種17種のほかに、レムールたち107種がすんでいますが、その96%の103種が絶滅の脅威にさらされています(IUCNによるレッドリスト:2020年7月更新)。2002年以来、私たちはアイアイなどの希少動物の保護と自然保護区の保全・管理を行ってきました。自然林の復活のための苗木作りや植林もようやく軌道に乗ってきました。私たちも株式会社メディア・マジックの着実な発展に見習って、マダガスカル現地での活動をこれからも続けてまいります。皆様のご支援を心からお願いいたします。」 故石原・古矢さんと中央高地アンチラベの桜の木(2017年12月) 2020年3月14日に亡くなった石原・古矢晃さんのことをしきりに思い出す。1988年に初めて会った時のことを日誌と手紙とフィードノートを見つけて惜しい人を亡くしたと痛切に思う。「孤掌鳴らし難し」という言葉どおり、まことに一人ではできないことがたくさんある。 今年の日本アイアイ・ファンド総会は、東大の会議室が使えるようになるはずの2022年4月以降に開催したいと思います。その時には、また別途ご連絡いたします。 そうそう、JTS授賞式で大見えをきった『冒険小説』完成です(2月7日)。全七巻400字詰め原稿用紙換算2,509枚。大作というか対策必要。 ホウオウボクの並木道(東海岸マロンツェチャ)(1983年12月) すでに大昔の話のようだ。 アンジアマンギラーナの調査基地(2021年3月10日:ブルノー氏によるドローン撮影) あたりの木々が年々大きくなって、サッチャナヤシの屋根がふき替えられています。 〈お知らせ〉 パラオに本社をもつ「インパックツアーズ」は、島と阿部をガイドとする「パラオ野鳥の旅」を「クラブツーリズム」の販売で、今年11月16日〜21日に実施することになりました。私たちガイドは今回ボランティア参加なので割安かと(資料請求受付ます)。 ファンドメンバー、ご寄附をお寄せくださった皆さまにお送りしております「2021年の日本アイアイ・ファンド活動報告書」の完全版はPDFでご覧いただけます(別窓でPDFファイルが開きます)。 Copyright(C)2002-2024 Nihon Ayeaye Fund. 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